ソラシェア総研が展開する次世代農家のためのプラットフォームSSF

aboutソーラーシェアリングとは

ソーラーシェアリングってそもそも何なの?

ソーラーシェアリングとは…

ソーラーシェアリングとは、別名「営農型太陽光発電」とも称される。耕作地の上に太陽光パネルを設定して、1つの土地で農業と発電事業を同時に行おうという取り組みだ。

意義
日本農業の課題と
エネルギー問題を一挙解決

長らく日本の農業は、儲からない職業とされ、後継者不足に悩まされてきた。耕作放棄地は増え続け、農村地域の活性化はままならない。一方で、地球温暖化が進み、自然エネルギーの普及加速化は世界的な要請だ。特に日本にとっては、エネルギー自給率を上げるためにも、自然エネルギーへの転換は不可欠だろう。ソーラーシェアリングには、問題解決への大きな可能性が秘められている。農家は、農地を守りながら、発電事業で安定した収入を得ることができる。農村は、環境を犠牲にすることなく、活力ある地域を蘇らせることができる。そして日本は、自然エネルギー導入拡大への新たな道筋を描くことができるのだ。

作物
作物に過剰な光は必要なし
パネルの下でもよく育つ

気になるのは、太陽光パネルの下で、農作物がちゃんと育つのかということだろう。しかし、心配はご無用。ソーラーシェアリングでは、一定の間隔を開けて太陽光パネルが設置されるので、生育に必要な光は十分に降り注ぐ。どの程度の間隔で太陽光パネルを設置し、どの程度の遮光率を確保すれば良いのかも実証されている。
そもそも植物は、種類ごとに必要とする光の量に上限があり、強すぎる光は成育の役には立っていない。普通に栽培されている大半の野菜は、ソーラーシェアリングによって悪影響を受けることはない。むしろ遮光することで、成育状況が良くなるものも少なくないのだ。

仕組み
農地の上に太陽光パネル
それが新しい農村の風景になる

農家の経営安定と自然エネルギーの普及を両立させる一石二鳥のシステムとして、いま多方面から期待を集めているソーラーシェアリング。
少し前までは、農地法の運用が厳しく、農地を農業以外に使うことは原則としてできなかった。しかし2013年、農林水産省が一定の条件(←P14)のもと、これを認める方針を打ち出したことで、着実に広まってきた。一般の認知度はまだまだ低いが、既に実証段階を終え、いまや日本全国1000ヶ所以上で導入されているのだ。

  • パワーコンディショナー

    太陽光パネルで作られる「直流」の電気を、電力系統(電線)に流せる「交流」に変換する設備。
  • 架台(支柱)

    太陽光パネルを支える骨組み。トラクターなどの農業機械が支障なく動けるよう、充分な間隔をあけて立てられる。
  • 太陽光パネル
    (太陽電池モジュール)

    太陽の光を電力に変える、発電システムの主役。ソーラーシェアリングでは、作物に適度な光があたるよう、すき間を空けて設置される。

売電の仕組み

だから安心、だから確実!
国が電気の買い取りを20年間約束

ソーラーシェアリングの大きな魅力は、つくった電気を売ることで、安定した売電収益が得られるところにある。しかも、決まった単価で20年間、変わらずに買い取ってもらえるのだ。
これを支えているのが、国が定めた「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」、いわゆるFIT制度だ。実際に電気を買い取るのは電力会社(一般送配電事業者)だが、その価格は年度ごとに国が定め、電力会社には20年間、同じ単価(FIT買取価格)で買い取ることが義務付けられている。だから、先々まで収入の目処がたち、農業にも安心して取り組めるというわけだ。
前ページで触れた通り、太陽光パネルを設置しても農作物の収量が落ちることはまずないので、農業収入はほぼ変わらない。売電収入とのダブルインカムで、収入総額の大幅アップが期待できる。
もちろん発電設備の導入に費用はかかるが、現状では8年~10年程度で元が取れるケースが多いようだ。FIT価格は年々下がっているが、太陽光発電設備も値下がりが続いているので、初期費用も安く済むようになってきている。ソーラーシェアリングは、いわば国によって利益が出ることを約束された事業なのだ。

売電収益シミュレーション
1200㎡の農地で、
売電収益は年間約170万円!
2017年度の売電価格は、
1kWhあたり21円

1200㎡の農地があれば、約50kWのソーラーシェアリングを導入できる。ここで期待できる年間発電量は平均約80000kWh。2017年度のFIT買取価格は、1kWhあたり21円(10kW以上2000kW未満の太陽光発電設備の場合)。従って、年間約170万円の売電収益を見込むことができる。ソーラーシェアリングの導入費用に1400万円かかるとして、およそ9年間の売電収益で、初期投資額を回収できる。FIT買取期間である20年間の売電収益の合計は、約3400万円となる。農業収益にプラスして、農家の経営安定に貢献することは間違いない。

農水省の制度

第1種農地でも、できる!
農水省が認めた新しい農地活用法

ソーラーシェアリングは、営農を前提とした太陽光発電システム。だから、農業に支障が出ないよう、その導入には一定の条件が付けられている。その条件が初めて明確に示されたのが、2013年3月31日付に発せられた農林水産省の通達「支柱を立てて営業を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」だ。これはソーラーシェアリングの導入条件を示したものであると同時に、この条件さえ満たせばソーラーシェアリングを行っても良いと農水省が正式に認めたものとして評価される。
具体的には、まず太陽光パネルを支える支柱(架台)の高さ・間隔について、トラクターなどの農業機械を効率的に利用できる空間の確保が求められる。そして重要なのが、ソーラーシェアリングを行うためには、その支柱の基礎部分について農地の「一時転用」をしなければならないということだ。
一時転用許可期間は3年で、問題がなければ3年ごとに再許可される(条件を満たした場合は10年以内)。一時転用許可にあたっては、パネル下部の農地における収穫量が、その地域の平均と比較して2割以上減少しないことなどが審査される。

導入件数の推移
日本のソーラーシェアリング
2016年度には1000件を突破!

2013年の農林水産省による通達を受けて、ソーラーシェアリングの導入は着実に進んでいる。2016年度には総計1054件と、ついに1000件を突破した。北は北海道から、南は沖縄まで、ほとんどの都道府県に広がりをみせている(P10参照)。

出典:2013年度~2015年度は農林水産省、2016年度は一般社団法人全国営農型発電協会調べ

Column

長島 彬さん

ソーラーシェアリングを推進する会 会長
CHO技術研究所代表
長島 彬さん

自然を壊さず自然と生きる

ソーラーシェアリングは、1人の男の情熱から生まれた。彼の名は長島彬。農業機械メーカーで長年研究開発に携わり、およそ400件もの特許を取ってきた人物だ。定年後に入った慶應大学で、初めて「光飽和点」のことを知った。一定の強さを超えた光は植物の光合成には貢献しないという原理だ。そして、すぐに思った、「太陽の光を植物の光合成と太陽光発電とで分け合う(シェア)ことができるのではないか」と。
2004年に特許を出願し、無償で誰でもこの技術が使えるよう2005年に公開した。2010年には、千葉県市原市にソーラーシェアリングのための土地と家を購入し、本格的な実証研究を開始した。2013年、農林水産省がソーラーシェアリングを認める方針を打ち出した背景には、長島さんの取り組みが大きな意味を持っていたのだ。
今日では、全国1000ヶ所以上にまで普及したソーラーシェアリング。長島さんは、この現状に対し、「ソーラーシェアリングが広まっていくのは良いが、なかには不適切な設備もある。あくまでも営農を重視し、自然災害に強いものでなければならない」と釘をさす。それゆえ、適切な設備としては、「細身の太陽光パネル(35cm程度)、遮光率は35%以内、強風時にはパネルを容易に水平にできる構造」であることを推奨する。 さらに、「ソーラーシェアリングは農業だけのものではない」のだとも。屋上庭園や駐車場、水産業などにも応用できるという。いまや、その意義は海外でも認められ、熱帯地方の飢餓と貧困をなくす技術としても注目を集めている。自然を壊さず、自然と共生する太陽光発電......ソーラーシェアリングには無限の可能性が秘められているようだ。