reportレポート
取材
果物王国・山梨で広がる果樹×太陽光発電という活路
後継者不足に悩むシニアの兼業農家の間でも、ソーラーシェアリングの取り組みが、近年、注目を集めている。果樹栽培が盛んな山梨県で増えている、果樹型ソーラーシェアリング。その最新事情とは?
高齢の個人農家を救う進歩的な農業の在り方
日本一の日照時間を誇る山梨県では、1日の気温差が大きく、降水量が少なく水はけが良いという好条件もあって、果樹栽培が盛んだ。これらの条件はすなわち、ソーラーシェアリングにも適した土地であることを示している。事実として、今や、県内そこかしこの果樹園でソーラーシェアリングが普及しつつある。
「後継者不足に悩む個人農家の間でも営農型太陽光発電システムが注目され、普及してきています。安定した収入が見込めるため、家を出た子どもが帰ってきて兼業農家として継ぐケースもありますよ」。
そう話すのは、営農型太陽光発電システムのコンサルティングを手がける株式会社エヌエスイーの中村はやまさん。4年前に県内初の事例を成功させて以来、全国で施工を手がける。現在も依頼が増えるばかりだという。
桃、柿、ぶどうなど、山梨名産の果物は数多いが、なかでもソーラーシェアリング下の作物として人気急上昇中なのがシャインマスカットだ。2014年にソーラーシェアリングを始めた後屋敷さんは、こう話す。
「シャインマスカットは房が青いため、太陽光を浴びすぎても良くない。むしろ日陰に置くほうがいいんです。ソーラーシェアリングとは好相性で、360坪で今年は1500房採れました」。
そもそも背が高く、上に枝葉を伸ばす果樹は、ソーラーシェアリングとの相性が懸念されがちだ。しかし、適正な設計、管理をすれば営農、発電のいずれにも悪影響はないという。それに、施工技術が進歩した現在では、果樹が植えられた状態でもソーラーを施行することが可能に。立ったまま作業ができる果樹は、作業者の負担が少ないというメリットもある。
まさにシニア農業者にとっていいことづくめの果樹型ソーラーシェアリング。今後も山梨でさらなる盛り上がりを見せていきそうだ。
photo&text: Yukiko Soda
出典:EARTH JOURNAL(アースジャーナル)vol.06 2018年
販売サイト(https://earthjournal.jp/information/33791/)