Solar Sharing for Farmers 次世代農家のためのプラットフォーム

reportレポート

対談

環境と農業──ソーラーシェアリングは問題解決の糸口になる

環境と農業──ソーラーシェアリングは問題解決の糸口になる

半農半歌手 Yae × パタゴニア日本支社長 辻井隆行

半農半歌手として活動するアーティストYaeさんと、グローバル企業パタゴニアの日本支社長である辻井隆行さん。一見全く接点がないように思われる2人に共通するキーワードが、「ソーラーシェアリング」。それぞれがどのようなきっかけで、そしてどんな想いでソーラーシェアリングと関わり始めたのかを、語り合っていただいた。

ソーラーシェアリングを始めるきっかけについて

Yae 今回私の暮らし、そして活動の拠点になっている「鴨川自然王国」にソーラーシェアリングを作ろうということになったのは、「田舎のヒロインズ」(※1)代表の大津えりさんからのお誘いがきっかけでした。実は、まだ東京電力への申請がやっと完了したところで、来年(2019年)の3月10日「農山漁村女性の日」(※2)には、完成発表ができるといいなと思っています。もともとソーラーパネルは、古いものが家にあったんです。というのも鴨川自然王国を作った父が、設立当初に建てた家が、当時でも最先端のエコハウスだったので、屋根にはソーラーパネルが載っていたんですね。でも改装を機に外してしまっていて……。今回お世話になった市民エネルギーちば(※3)の東さんに、うちの収穫祭でお会いした際に「これってなんとかできないかしら?」って相談したりもしていたんですね。そんなところに、オンライン講座で「エネルギー兼業農家のススメ」などをやっている大津さんからお話しがあって。

辻井 僕の方は、会社の活動を通してでした。パタゴニアは、「環境問題に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」という、会社としてのミッションを掲げているんですが、環境問題はもはや様々な側面を同列で語れないほど、深刻な状況になっています。中でも気候変動については、人間の身体でいえば今や「大出血」の状態で、本来はそれを止めるための「体質改善」をしなければならないのに、それすらもできない。CO2(二酸化炭素)やメタンガスなど温室効果ガスの排出は抑えなければならないから、人間が生きていくのに必要なエネルギー(生み出す方法)を変えて行く必要があるし、大気中に排出された二酸化炭素を地中に戻すために、森林の保護や、土壌を健全な状態にして炭素の吸収量を増やす必要もある……僕も初めはそれほど詳しくは知りませんでしたが、そういうことを学びながら、その過程でソーラーシェアリングの存在を知りました。

Yae 辻井さんは、個人でソーラーシェアリングの発電所をお持ちですよね?

辻井 誤解されると困るんですが、あくまで会社としての取り組みが先なんですよ(笑)。ところが色々な情報を知れば知るほど、僕自身も考え方が変わっていって、個人でも始めたくなってしまったんです。結局(規模も小さいので)会社より先に、個人の発電所が完成してしまったんです(笑)。会社の方の取り組みも、もちろん進行していて、来年の早々には公に発表できる段階になると思います。

辻井さん個人の発電所(50kW)は、匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所の隣に、今年8月に完成、すでに稼働中。
農地では大豆を栽培、営農は、本誌前号でも紹介した「Three Little Birds」に委託している。
世界企業の創業者も認めた
ソーラーシェアリング

辻井 ご存知の通りパタゴニアはアパレルブランドですが、洋服を作る過程で、環境にもかなりのインパクトを与えてしまいます。だから、うちの会社には「自分たちが環境に与えるインパクトをできるだけ減らして行こう」という取り組みをする担当や、同じような活動をしているNPOなどの団体を応援して行く担当もいます。そんな会社の環境社会部門のスタッフが、市民エネルギーちばの東さんたちに色々教わってきて、僕に「これはすごいですよ!」って教えてくれたんですね。
パタゴニアは、アパレルの他にいくつか子会社を持っています。その中に「ティンシェッド・ベンチャーズ」という投資基金の管理を行う会社(※4)があるんです。先程言ったようなミッションを達成する上で、同じような理念を持った事業を支援するために投資を行っているんですが、今回のソーラーシェアリングに関する取り組みでも、そのスキームを使えればとも考えています。
創業者のイヴォン(・シュイナード)に、ソーラーシェアリングについて伝えると、はじめは「農地で発電なんて!」と否定的でした。ところが、説明を聞くともちろん納得してくれて、プロジェクトは順調に進んでいます。

※1【田舎のヒロインズ】……その名の通り、農を営む女性たちが中心となり、農家の女性の発信力アップ、農村の受信力アップ、豊かな農村を次世代につないでいくためのアクションをテーマに活動中。http://inakano-heroine.jp/
※2【農山漁村女性の日】……農山漁村の女性たちが果たしている役割を正しく認識するとともに 女性の能力を一層発揮するための環境づくりを目指して 農林水産省が提唱。 3つの能力(知恵・技・経験)をトータル(10)に 発揮して欲しいという願いをこめ 3 月 10 日に設定された。www.maff.go.jp/j/keiei/danjyo.html
※3【市民エネルギーちば】……ソーラーシェアリングの創始者である長島彬氏の指導を直接受けながら、ソーラーシェアリングの設計施工、環境調和型の市民発電所を地域主導で作るなど、地域と環境にこだわった活動を展開する合同会社。
※4【ティンシェッド・ベンチャーズ】……パタゴニアが2013年に発足させた基金。ビジネスの手段として環境問題に対応する起業家に投資・指導し、結びつけることを目的とする。名前の「ティンシェッド(ブリキ小屋)」とは、創業者のイヴォン・シュイナードが、廃品を材料に登攀(とうはん)用のハードウェアの製造を学んだ場所に因んでいる。

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