reportレポート
取材
安心安全なオーガニック農法にこだわり
作物にもやさしい「雨樋付き」ソーラー
なんと2011年にスタートし、野菜の有機栽培にこだわるソーラーシェアリングが、三重県にある。
太陽光発電の架台には、下の作物に影響が出ないよう「雨樋(あまどい)」が設けられている。
東日本大震災契機に
営農型発電スタート
三重県三重郡菰野町(こものちょう)に、園芸農家である小掠緑化の小掠三八社長が営農し、タデックの竹内 政隆 社長が太陽光発電の設計・施工を担当したソーラーシェアリングがある。
2人がソーラーシェアリングに取り組む契機になったのは、2011年3月の東日本大震災だった。
小掠社長は、福島第一原発の事故に強い危機感を感じ、自然エネルギーである太陽光発電に着目。しかし、小掠緑化として保有している土地は農地のみで、法律上、農地で農業以外の事業を行うことは禁じられていた。
小掠社長は、行政に掛け合い、農業を継続しながら農地の上で発電する「営農型太陽光発電」の許可を取った。まだソーラーシェアリングという事業がまったく認知されていなかった2011年のこと、全てが手探りだった。
タデックの竹内社長は、そんな小掠社長の熱意に共感し、ともに取り組むことを決意。パネルメーカーの選定や、架台の角度など、太陽光発電の専門家ならではの視点で助言しながら、一からソーラーシェアリングを作り上げた。
現在、ソーラーシェアリングの下では主力作物であるタマリュウの他、化学農薬や化学肥料を使わない有機野菜栽培を実施。規模拡大を狙うのではなく、露地栽培で一反・温室栽培で一反という小規模ながら、安心安全でおいしい野菜を作ることにこだわり、トマトやレタス、ピーマン、ワサビ菜などを育てている。
雨水対策を万全に
架台に雨樋を設置
そんな有機栽培のソーラーシェアリングを文字通り支えているのが、タデックと小掠緑化が共同開発した「雨樋(あまどい)付き太陽光発電架台」だ。
ただ単純に農地の上へ太陽光パネルを設置しただけでは、雨の日、特に最近増えているゲリラ豪雨のような大雨が降った際に、問題が生じる。雨水がパネルを伝ってまとまることで、大量の雨水が一箇所に集まってしまうのだ。
その結果、パネルの真下に位置する作物にのみ、まるで滝のように大量の雨水が集中して降り注いでしまう。雨水の直撃を避けたとしても、勢いよく降り注ぐ水によって周囲に泥が跳ね、やはり作物に悪影響を及ぼしてしまう。
そこでタデックと小掠緑化は、太陽光パネルを固定する架台に「雨樋」を備え付けた。これによって、雨水が集中することを防ぎ、作物への影響を軽減することに成功。この「雨樋付き架台」は、特許を取得した。
さらにこのソーラーシェアリングは、三重大学の実証実験にも参画。「太陽光パネルの下で、どのような作物を栽培できるのか」などの実証実験に協力し、多種多様な野菜を栽培している。
これまで、半日陰で育つミョウガやショウガはもちろん、日照が必要と考えられるスイカ・ウリ系、サツマイモ・ジャガイモなども順調に生育。きちんと日照量を計算してソーラーシェアリングを設計すれば、多くの作物を栽培できることを実証している。