reportレポート
取材 福島大学 金子信博
福島大学・金子信博先生の実験圃場を見せていただきました!
6月21日、日本の土壌生態学の第一人者である金子信博先生の福島大学実験圃場へ視察に伺いました。ご存知の方も多いかと思いますが、金子先生が研究されている「不耕起栽培」は、土中の微生物や菌類のバランスを崩さないで作物を栽培する農法で、環境への負荷が低く、また土の持つ本来の力を最大限に活かしながら二酸化炭素の固定にも有効なため、まさに「ミライの農業」には必須と言えるものなのです。
早速見せていただいたのは、福島大学の正門近くにある実験圃場。耕起、不耕起だけでなく除草剤の影響もプラスした4種類の耕作方法を比較しながら、センサーなどを使用して、土の状態や作物の生育状況などを検証しているそう。
わざわざ実験キットを持ってきていただいて説明いただいたのは、同じ不耕起栽培でも、除草剤を使うことで圃場の環境は大きく変わり、表土が雨で流されやすくなるなどの悪影響が出てしまうということ。これまで「不耕起栽培」は世界でも最先端のエコな農法という安直な認識しか持っていませんでしたが、例えばアメリカなどで大規模に喧伝されている「不耕起栽培」の中には、こうした除草剤を使用したものも多く含まれているというお話には、大いに驚きました。
水が入った容器の中に、それぞれ(上写真の左から)不耕起栽培(除草剤使用)、不耕起栽培、耕起栽培(除草剤使用)、耕起栽培の圃場の土を入れてかき混ぜた後、しばらく放置すると、ご覧のような結果に。水が濁ったままということは、土が分散したままということで、その分水に流されやすいということ。除草剤を使わない不耕起栽培の土は団粒が壊れないので沈澱が早い分、雨などで表土が流れ出す可能性も低くなるというわけです。
「不耕起栽培以外の圃場ではミミズをはじめとする土壌生物が少なく、土を団粒にする生き物がいないのです」(金子先生)
不耕起栽培では、表土の乾燥を防ぎ、土中のさまざまな微生物・菌類のバランスを保つために、育てる作物の他に「カバークロップ」と呼ばれる特性の異なる複数の植物が生育する状況=自然に近い状態を維持します。日本でもクローバーなどが有名ですが、ここでは小麦を作物として育てようとしましたが、気温的にあまり適していないことがわかり、昨年はカバークロップとしてライ麦に変更したのだとか。