ソラシェア総研が展開する次世代農家のためのプラットフォームSSF

reportレポート

取材

次世代に農地を残したい――
地域の未来を賭けたソーラーシェアリング

地域再生への思いを語る「えこえね南相馬」理事長の高橋荘平さん。
「地域に根ざした取り組みにするためには、住民主体であることが不可欠でした」。
農家と共同で発電所と「黄色いハート」の栽培を
森合発電所での、カボチャの収穫の様子。

その後、「再エネの里」での実績を元に地元農家と相談を重ね、南相馬市太田地区内に合計8ヶ所の設備を計画。2015年8月には、「えこえね南相馬ソーラーヴィレッジ」として全設備で稼働を開始した。
それぞれの設備は、実験も兼ねて異なるタイプの施工方法と施工業者を組み合わせた。結果的には、トラブルがあったときに対応の早い地元の施工業者が良いことがわかったという。稼働から2年を経過した現在、発電量は想定より1割ほど多く、収益の多くを地権者に渡すことができているという。何よりソーラーシェアリングの取り組みによって、複数の農家が農業を諦めずにすんだことが大きな収穫だった。
パネルの下で育てている作物は、営農者と相談して決めている。大半は、作付けの期間が短く営農者の負担が少ないとされるカボチャだ。この地域の特産品である「黄色いハート」という品種で、農協も栽培を推奨している。他にも、大豆やミョウガ、アスパラや春菊などが栽培されていて、いずれもパネルの下でも収量は充分だ。課題としては、連作障害のおそれがあることだ。ソーラーシェアリングをやる場合、農林行政に提出した営農計画に従って栽培しなければならないが、同じ作物の栽培を続けると品種によっては連作障害が起こりやすくなる。米とは違い畑ではさまざまな作物をつくりながら土を維持することが基本なので、今後、制度の柔軟性が求められるところだ。

パネルの間の隙間は大きいので、カボチャ栽培には影響がない。
4年経って見えてきた成果と課題

ソーラーシェアリングを実践して4年が経ち、当初の懸念だった「収量が落ちる」「トラクター作業がしにくい」といった問題はほとんど起きていない。売電収入も順調だ。地域外からは多くの見学者が訪れ、南相馬の他の地域でも設置を検討する農家が出てきたという成果もあった。しかし高橋さんが考えていたほど、地域で広がっているわけでもない。
「パイロットプラントである再エネの里発電所を設置したあと、年間で1000人ほどの方が見学されて、意義ある交流につながりました。ソーラーシェアリングが社会的に少しずつ認められてきている手応えも感じます。今後どのようなスタイルで広めていくかは検討中ですが、ソーラーシェアリングによって農業を継続していける可能性が広がるので、そういう環境を作っていきたいと思っています」(高橋さん)。
地域の将来のためにソーラーシェアリングを手掛けた「えこえね南相馬」。今後は建設コストを安くする方法を検討しながら、売電に限らず、自家消費や地域の工場に電力を供給する方法も模索していく。

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