reportレポート
取材
福島の有機農家が挑戦するエネルギー自給への道
「農家こそエネルギーを創るべきだ」と立ち上がったのは、福島原発事故で農作物被害を受けた有機農家たちだった。クラウドファンディングなどで支援者を募ったソーラーシェアリングが、昨夏ついに稼働。彼らの挑戦に今、注目が集まっている。
農林中央金庫の融資で農業法人が発電事業者に
2018年8月、福島県二本松市で、市内初となるソーラーシェアリングがスタートした。運営するのは、無農薬野菜を生産する「一般社団法人 二本松有機農業研究会」だ。もともと地元の有機農家による任意団体だった同会は、ソーラーシェアリング事業のために法人化。きっかけは、7年前の福島原発事故だった。
「米も水もあったけど、エネルギーだけがなかった。車さえ動かすことができない。自給自足の生活をしているつもりが、こんなにも無力なのかと愕然としました。その反省から、農家こそエネルギーをつくるべきだと思ったのです」と、代表理事会長を務める大内督さんは話す。
震災後も放射能汚染に屈さず、安全な農業技術を追求する一方、同会内にエネルギー部会を立ち上げ、各地を視察。当初は、農業ゴミなどを燃やすバイオマス発電を目指したものの事業化のメドがつかず、農地転用して電気と農作物の二毛作ができるソーラーシェアリングに照準を絞ったという。
農業法人が発電事業者になるケースは全国でも非常に稀だ。資金調達が困難というのが理由の1つだが、今回の事例では、ソーラーシェアリング事業としては全国で初めて農林中央金庫の融資を受けたほか、思いに賛同するNPO法人や個人の寄付により資金を確保。1口7000円=パネル1枚分でクラウドファンディングを募った「パネルサポーター制度」では、実に162枚分の資金が集まったという。
建設もできるだけ自分たちの力で行おうと、県内で早くから太陽光発電を手がけるKTSE合同会社の斎藤広幸さんの指揮のもと、同会メンバーがパネルを取り付けた。今後、農閑期の仕事として請け負うことも視野に入れているという。
また、発電した電気は、再生可能エネルギーを中心とした生活協同組合系の新電力「パルシステム電力」に売電が決定。将来的に、売電収入を新規就農者の教育に投じる予定だという。まさに、再生可能エネルギーの、理想的な地産地消モデルを実践している格好だ。
「再生可能エネルギーの導入が大手資本だけで進むなら原発と変わりません。地域のエネルギーを自分たちで創るという新しい農業の形を実践することで、持続可能な未来につなげていきたいですね」。
一般社団法人二本松有機農業研究会
場 所 | 福島県二本松市 |
設備容量 | 49.5kW |
土地面積 | 1998㎡ |
導入年月日 | 2018年8月24日 |
年間の売電収入 | 約230万円(見込み) |
パネルの下で育てている作目 | キャベツなどの葉物、大豆(来季から) |
photo&text: Yukiko Soda
出典:EARTH JOURNAL(アースジャーナル)vol.06 2018年
販売サイト(https://earthjournal.jp/information/33791/)