ソラシェア総研が展開する次世代農家のためのプラットフォームSSF

reportレポート

対談

日本には、ソーラーシェアリングが必要か?

ハードルとなるのは
官僚の「縦割り」問題?

津田 自然エネの活用には、どんな意義があるとお考えですか。

小泉 何より無限の夢があるよね。太陽光、風力だけでなく水力、地熱もある。太陽が陰ったり、風が吹かなかったりしたら発電できない、と主張する人もいますが、蓄電技術も発達している。政府が原発ゼロを宣言して自然エネ普及に注力すれば、すべてが賄えるようになるまで100年もかからないと思うよ。

津田 データでもそれが証明されてきたのに、脱原発と自然エネルギーの導入がなかなか進まないのは、経済界が反対しているからです。何が原因だと思いますか。

小泉 今まで原発事業に関わってきた技術者、研究者、事業者たちが、その仕事を続けていきたいという気持ちが強いんだろう。廃炉にしても、事故を起こしていないイギリスでも90〜100年はかかると言っているくらいだから、福島は40年じゃ無理でしょう。メルトダウンの状況も分かっていないんだし。

津田 チェルノブイリだってそうですよね。

小泉 よく40年で廃炉と言ったもんだなあと。その時はみんな死んでいるから責任がないんでしょう。

津田 海外は脱原発に舵を切って、経済的にも好影響を与えているじゃないですか。小泉さんも安部首相に脱原発を進言したということですが、官僚の言いなりでまだ何もやれていないですね。

小泉 安倍さんに「官僚に騙されるなよ」と言っているんだけど、わからないんだよ。経済産業省なのか、電力会社なのか、政府なのか、責任の所在があいまいなんだ。これを変えるのは、やっぱり政治の責任だよ。

津田 民間でソーラーシェアリングみたいな取り組みが増えればニーズも高まり、そこに政治が追い付ついてくるという側面もあると思います。

小泉 私もそう思います。原発が無くてもやっていけるんだ、農家も自然エネを使うことで色々な農作物を作れるんだという実態が広まっていけばいい。

津田 一方で、ソーラーシェアリングは官僚の縦割りの問題があります。許可を3年ごとに取り直さないといけないとか、農水省と経産省の連携がうまくいっておらず、導入のハードルが高い。

小泉 この前も千葉を視察した時、そういう意見が出ていたよ。

津田 理解のある農業委員会だといいんですが、そうじゃないと認められない現状もある。それを変えるのも政治だと思います。郵政民営化みたいな、なかなか変わらない官の壁がありますが、どうすれば変わるでしょうか。

小泉 やっぱり国民の理解と声が最も大事ですよ。電力会社だって、自然エネ活用をやろうと思えば、いくらでも技術はあるんだから。ただ既存の発電所に多額の投資をしているから、今の設備を全部変えるとなると資産が負債になるかもしれないから、そう簡単にはいかないでしょう。でも、それも政治が何とかしないといけない。

津田 やはり、何とかソーラーシェアリングを普及させたいですね。

小泉 全国の取り組みの実態をどんどん紹介するのが大事だよ。各地で色々な方法があると思う。

津田 農業が食を支え、自然エネ活用でエネルギー問題も解決できる。その意味では、ソーラーシェアリングを導入した農家がヒーローになれる環境が大事ですね。この仕組みができれば、ODAで発展途上国にも輸出できますよね。

小泉 原発なんかより設備費用も安いし、よっぽどいいよ。

津田 官僚は現状維持したいという統治機構になっており、それを変えるのは政治ですが、脱原発の受け皿となる政党がない。だからこそ、自然エネ普及を後押しする世論の形成が大事ですね。

Profile

小泉純一郎
1942年生まれ。衆議院議員、厚生大臣(第69・70・81代)、郵政大臣(第55代)、内閣総理大臣(第87・88・89代)、外務大臣(第132代)、農林水産大臣(第38代)などを歴任。一般社団法人自然エネルギー推進会議発起人代表。原発ゼロ自然エネルギー推進連盟(原自連)顧問。

津田大介
1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ポリタス編集長。早稲田大学文学学術院教授。大阪経済大学情報社会学部客員教授。テレ朝チャンネル2「津田大介 日本にプラス+」キャスター。J-WAVE「JAM THE WORLD」ナビゲーター。

photo: Kazunobu kataoka
text: Kousuke Ooneda


出典:EARTH JOURNAL(アースジャーナル)vol.05
販売サイト(https://earthjournal.jp/information/33390/

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