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reportレポート

取材 株式会社アイセス 代表取締役 齊藤 健悦

研究者、パネルメーカー、施工会社の共同で実現した水田でのシェアリング

研究者、パネルメーカー、施工会社の共同で実現した水田でのシェアリング

全国でも珍しい、水田でのソーラーシェアリングが秋田県内でスタート。3者のスペシャリストがアイディアと技術を注ぎ込み、これまでにない画期的なソーラーシェアリングが完成した。

メイン写真:高い架台の下を風が通る。温度が下がるとパネルの発電効率が高まるため、水田による冷却効果とあいまって予想より高い発電率だという。

日本の稲作が変わる!?
秋田発の新しいシェアリング

今年5月、日本屈指の米どころである秋田県において、水田とソーラーシェアリングを組み合わせた実証実験がスタートした。企画・運営を手がけるのは、秋田のソーラーパネルメーカー、株式会社アイセスである。代表取締役の齊藤健悦さんは、こう話す。
「人口減少、少子高齢化など、全国でも秋田県は、ネガディブな意味で10年進んでいるといわれています。我々の専門である太陽光を使って地元を活性化できないか、と辿り着いたのがソーラーシェアリング。やるからには、県内農地の9割を占める水田でやろう、と」。

水田でのソーラーシェアリングは全国でも極端に事例が少ない。実施にあたっては、ソーラーシェアリング研究の第一人者である「千葉エコ・エネルギー株式会社」の馬上丈司さん、太陽光発電の施工実績に優れた「株式会社ビル技研」の佐用功貴さんと共に知恵を絞り、試行錯誤を重ねたという。
例えば、通電効率性を考慮したパネル配置。研究者である馬上さんの意見を踏まえ、効率性の高い配置図面を作成。電損率を抑えた画期的な配置を実現したという。

左から、株式会社アイセスの齊藤健悦さん、株式会社ビル技研の佐用功貴さん、千葉エコ・エネルギー株式会社の馬上丈司さん。
あらたに開発されたソーラーシェアリング専用パネル。

ソーラーシェアリング専用のアルミ製架台も、独自に開発。強度や耐久性、組み立てやすさ、コストに至るまで高い総合力を誇る架台が完成した。また、スクリュー型の杭に「浮沈防止ベース」というビル技研の特許技術を施し、水田という軟弱な地盤でも強力な支持力を実現。他にも、ソーラーシェアリング専用の高効率モジュール(▼参照記事)を開発するなど、革新的な技術とアイディアを惜しみなく投入した。パネルメーカー、研究者、施工会社というプロフェッショナル達による共同開発の賜物と言えるだろう。

収穫期を迎えるパネル下の稲。

そして「まず自社で実践する」という方針から、齊藤さん所有の農地の一角、約0.1ヘクタールの水田に高さ約6.5mの架台とパネル576枚を設置。農作業は、斎藤さんの同級生であり、地元農家の湊さんが務め、「今のところ、生育には問題がない」と話す。
「日照時間が少なく、冬が長いなど条件の厳しい秋田で実現できれば、全国の農地でも活用できる。秋田スタンダードのソーラーシェアリングを普及させていけたら」と齊藤さん。秋田発の新しい農業の形に、注目が集まっている。

支柱間は、4.1m。農業機械の作業スペースも充分確保される。
アイセス井川町 水田ソーラーシェアリング
場所秋田県井川町
設備容量49.5kW
土地面積約4000㎡
導入年月日2017年5月8日
導入費用約1500万円
年間の売電収入約150万円(初年度のため予想数値)
パネル下で育てている作物コメ(あきたこまち)
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出典:EARTH JOURNAL(アースジャーナル)vol.05
販売サイト(https://earthjournal.jp/information/33390/

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